はじめに
活動性のある虫歯がエナメル質を通過し、象牙質を侵食して歯質の崩壊を続けると、深部にある歯髄では虫歯が到達する前から炎症反応が生じていることがわかっています。以前は歯髄と象牙質は別々に考えられていましたが、現在では歯髄-象牙質複合体という概念がスタンダードとなっています。つまり、一昔前までは歯髄の露出がなければ大丈夫と考えられていたものが、そのことは現在では否定されていて、象牙質が露出してからは歯髄を扱うように慎重な処置が必要とされています。
つまり、虫歯の除去の仕方から仮蓋の材料、金属の使用など、あらゆるものが配慮の対象になりました。そもそも配慮するべきものではありましたが、歯というものが硬組織であるために主に機械的性質ばかりが議論されていた傾向が強いです。しかし、歯髄-象牙質複合体という概念が見直され、いろいろなことが解明されている現在では、議論が少なかった分野にフォーカスが当たるようになってきています。
それらのことによって、歯髄の状態の判断が変わり、以前よりも歯の神経を取らないで済む確率が格段に上がりました。その代わり、臨床上では歯髄の状態の判断はより複雑であることがわかりました。痛いから神経を取るという安易な治療方針は時代遅れになりつつあります。