これからは長く使えるかどうかの時代
かつてのインプラントは手術の差異によって予後が大きく違ったものになっていました。しかし、昨今のインプラントの開発は目紛しいものがあり、適切に骨の中に埋入さえしてこられれば、ほぼオッセオインテグレーション(骨結合)が可能になるというところにまできました。また、インプラントの周辺機器も改良が繰り返され、手術による差異もほとんど見逃せる程度のものになるまでに技術革新が行われています。以前からありましたけれど、近年になって特に言われているフラップレスという歯茎を切開しないでインプラントを埋入する技術ですが、これが広がりつつあるのも、インプラント手術による差異がなくなってきたことを表しているように思えます。このことにより、手術主導のボトムアップトリートメントという概念から、より長期的にインプラントを保持する為のトップダウントリートメントという概念が普及しつつあります。これからは長く使うためにどうすれば良いのかを真剣に考える事のできる時代へとなってきています。
長期予後の為の工夫
安心できるインプラントメーカーの選択
先日、老舗の大手インプラントメーカーが投資会社にM&Aされたことがありました。そして、その後に販売されたインプラントの感染が早くなってしまったということがありました。老舗なのでデータが蓄積されているという理由で研究費が削減されたためのようでした。
当院では、それらの事情なども含めてインプラントメーカーを厳選し、身体に入れるものだからこそ吟味したインプラントをご提供したいと考えています。
安全な骨補填材の採用
骨がないところに入れる、骨の代わりになるもの骨補填材といいます。この骨補填材には様々なものがあり、ずっとその場に留まっているものや、一定期間が過ぎると吸収するもの、骨を誘導するもの、骨に置き換わるものなど様々です。そして、治療後にはほとんどが骨様組織と呼びます。厳密には骨ではないからです。
骨の成り立ちが違う場所に同じ材料を適応させますから仕方がないことです。
それでも、臨床においては有効性が認められていますので、使用する必要があれば私も使います。ただ、材料に関しては厳選が必要です。牛の骨を砕いて殺菌したものもあれば、とても馴染みの良い材料もあります。今のところも問題となってはいないですけれども、何か分かるのは多くは後からですので、配慮をしてし過ぎることはないと考えています。
造骨しなくて済む治療計画
骨補填材の配慮を考えますと、自身の骨のみに埋められるように計画することが大切になってきます。そのためには、短いインプラントや被せ物への配慮などでカバーすることも考える必要があります。
第三者機関によるCT撮影と解析の依頼
インプラント手術を安全に行うためにはCT撮影が必要不可欠になります。当院では当面の間、専門機関にCT撮影を依頼して第三者の眼を入れることにしています。そのようにすることで、独りよがりの治療にならないようにしています。また、いくら解析ソフトが優秀でも、実際のところはそのCT解析を参考に人間が治療します。サージカルガイドを使った場合を除いては、寸分の狂いもなくその解析通りに出来ることはほぼありません。その時に一番必要なスキルが歯の軸を読むことです。これは、私の場合は矯正歯科で養いました。知人に矯正装置を歯の軸を読んで装着してもらうと、大概が間違えます。この点で、私は矯正歯科を行なっていてよかったと思いました。