エナメル質の有機色素
歯の表面にあるエナメル質は、その組成のほとんどがハイドロキシアパタイトと呼ばれる成分で構成されています。このハイドロキシアパタイトは無機質であり、エナメル質は有機質をほとんど有しない構造物であるといえます。このエナメル質の色調はほとんどハイドロキシアパタイトの色調が反映されているために無色透明です。
また、エナメル質の内部には象牙質があります。この象牙質は象牙細管などの無機質成分とコラーゲンを均等に近い割合で有する構造になっています。そのため、象牙質そのものが黄色味を帯びています。
象牙質に着色成分が侵入すると着色して見えますけれども、それは象牙質そのものが持つ色調に由来しているためエナメル質ほどには顕著に着色を感じられないようです。
以上のことにより、歯が着色して見える原因は、エナメル質表面あるいはエナメル小柱に存在する有機色素にあると考えられています。この有機色素が持つ分子構造は、それぞれが異なる可視スペクトルを示します。黒・青・グレーなどの寒色系の着色は、その有機物質構造式が短く、赤・黄色などの暖色系の着色は構造式が長いといわれています。そして、これらによって歯が着色しているように見えるといわれています。
この説の疑問点
歯の内部に着色成分が侵入するということなのですが、まず、どこから侵入してきたのかが不明確でわかりません。身体内部から根尖孔を通って歯の内部に侵入したのか、エナメル質を通過して象牙質まで侵入したのか。もしくはどちらもである場合と、どちらでもない場合もあるかと思われます。また、この場合の有機色素というものは着色として目で見て確認できるもののようです。ということはかなり大きな粒子であると考えられるわけですが、それだけの隙間が歯にあるようであれば細菌なども侵入できそうなものです。もしそれができるようであれば、異物反応として四六時中歯髄は刺激され、常に着色成分という異物が刺激を加えているわけですから、歯髄組織にも当然炎症反応が生じてもおかしくなさそうなものです。